好きなものを愛でていれば、人生おわる

どう転んでも生きにくさにのまれない方法を模索中(詳細:ブログ記事【はじめに】)。ジャンル特化ではなく、模索結果に沿った作品を紹介。毎週木・日で更新予定。

本:『ダメをみがく』①(津村記久子、深澤真紀)

この本は、私にとってのバイブルである。

『ダメをみがく』(紀伊國屋書店/2013年)は、数々の賞を受賞している小説家・津村記久子さんと、コメンテイターとしても活躍するコラムニスト・深澤真紀さんが仕事や生活について語っている対談本である。

 

この本ほど私の生き方に合っていて、背中を押してくれる本は無い。
今でこそ、この本に書かれている考え方が少しずつ市民権を得てきた感覚はあるけれど、この本が発売された当時は、こういうことを言ってくれる人が周りに誰もいなかった。
副題が『“女子”の呪いを解く方法』のため、「女子としての生きづらさ」という側面から紹介できる本でもあるのだが、性別に関わらず、全人類の生きづらさに対する具体的な解決法がてんこ盛りの本である。

このブログでは、①「人間関係編」②「生き方編」として内容をご紹介したい。
※ 対談形式のため、話し言葉で書かれている本です。津村さんは関西の方なので、引用もそのまま関西弁としています。

 

【人間関係編】

感情丸出しの人、深追いしてくる人に対する警戒

この本で私が最も共感したのは、この感覚かもしれない。
著者の津村さんは、新卒で初めに入った会社でパワハラにあったことを伝えながら、「何を根拠にそんなに感情丸出しで生きていいと思ってるんやろう?」と言う。
また「今まであかんかった人はとにかく深追いしてきた」とのことで、人へ興味を持つことと、その表し方の塩梅について話す。

 

…とてつもなくよくわかる。私が遭遇してきた人の中で厄介だなと思う人は、たいていこのどちらかに該当する。

学生時代の私は、感情丸出しの人にあれこれ言われがちだった。常にへらへらしていたため、怒ることが無さそうと思われていたのであろうか。親しみやすくて心の広い人に見られたかったのもあるが、当時は何か言われてもどうすればいいかわからず、ただそのままへらへらしていた。
感情丸出しの人は、厄介さが周囲にもばれてしまうというわかりやすさを持っていることが、被害者にとっては唯一の救いだ。
学生時代は、社会人のような上下関係は無いため、こういう人は疎まれやすく、大きな顔をできなくなっていくことの方が多かった。

職場でこのような人と関わる場合は、本当に大変だと思う。津村さんの場合は、「合わない人と相性が合う日は来ない」ため、逃げることを選択した。
深澤さんも「他人を使ってガス抜きをする人の被害者になったときは、その加害者から逃げること」を勧めている。

今でこそ「逃げること」は推奨されはじめているが、出版当時は逃げることにネガティブなイメージを持つ人の方が多かったように思う。そのような中で、逃げるという選択肢を当然のものとして捉えていた二人を、私はとても頼もしく感じていた。

 

私にとって、未だに消化できていないのが、深追いしてくる人である。
キミコって人に対して興味ないよね、と言われることがある。
誰かの行動や言動についての話に乗らない時にそういうことを言われるのだが、そう言ってくる人のほとんどがこのタイプである。
たしかにそういう人は、普段から積極的に人と関わろうとし、自分から人へ話しかけにいくことも多い。しかし、その場にいない人の行動や言動をネタにして盛り上がることが、人に対して興味がある、ということなのだろうか。
他の誰かと盛り上がるため、ネタを探しに行くため、積極的に人と関わろうとする恐ろしい人種がいることを社会人になってから知った。
今まではそういう人が少ない環境にいることが多く、いたとしても避けて生きてきたので、とても衝撃的だった。
そういう人に限って、自分がコミュニケーション上手と考えているところも恐ろしい。

人との接し方に対し、深澤さんは「興味があることだけ態度で示して、深追いしない」のが良いかもと提案する。
深追いしないことは絶対条件として、人への興味の表し方についてはずっと考えていきたいと思っている。

 

ゆるい関係性

津村さんは会社員として働いていた時、近くのコンビニで7年ぐらい同じ店員さんに世話をしてもらっていたそうだ。
天気の話をするぐらいの関係性だったが、どれだけ仕事が上手くいかない日にも、その人たちがいつもと変わらずてきぱき仕事をしていることにほっとしていたらしい。
この話を聞いた深澤さんも、最初の会社で編集者をしていた時、印刷所の営業マンが支えになっていたことを思い出されていた。

このような「積極的に応援されなくても、好意は伝わってくるゆるい関係性」の大切さを書いてくれていることも、この本を好きな理由の一つである。
現在放送中の『凪のお暇』における、凪と(ゴンさんを除く)アパート住人との交流しかり、こういう関係性を描いた作品が私は大好きである。

関わり合いの濃淡によらない人と人の間に生まれる温かさは、世の中全体が優しくなるためのとても大事な要素だと思う。
こういう関係性を軽視せずに大事にできるような人でありたい。

 

また私は、深澤さんの「人の手にかかってるものに接するのは全部人間関係」という考え方が大好きである。
この数年で最も変わったのではと思う世の中の価値観の一つに、「オタクに対する風当たり」があるように思う。社会全体にしてみればお金が動く、個人にしてみれば心が潤う、とまさにウィンウィンの関係なのに、どうして今まで風当たりが強かったのかが不思議なぐらいだ。
「人が全力をかけて創ったものを、全力で受け取る」という関係性の尊さが見直されている現在は、どんどん生きやすくなっていると感じる。
さらにこの深澤さんの考えが当たり前になっていけば、孤独という概念は無くなるのではないかとさえ思う。

 

長く親しくしていきたい人との付き合い方

 長く親しくしていきたい人との付き合い方についても、この本は参考になることだらけである。
「完璧な関係性はない。小さい地雷を踏みあってしまうのは、関わってたらある程度しょうがないので、規制緩和(かっとなる狭い感情を弛緩)する」
「ネタを仕込んで人に会う。そうしないと、愚痴などの頭の中のいちばん上の引き出しのことしか出てこなくなる」
 「大きな出来事があった時に連絡をしがちだが、どうでもいいものをきっかけにして集まる」
など、感情を丸出しにせず、深追いしないための具体的な付き合い方を示してくれている。
私の思い描いていた「素敵な大人の人付き合い」をお二人はまさに実践している。

 

ダメどころか、デリカシー、寛容さ、ユーモアを持った素敵な大人である二人の対談本の話は、②へ続きます。