好きなものを愛でていれば、人生おわる

どう転んでも生きにくさにのまれない方法を模索中(詳細:ブログ記事【はじめに】)。ジャンル特化ではなく、模索結果に沿った作品を紹介。毎週木・日で更新予定。

本:『ゆるく考えよう 』 (ちきりん)

今回は、ちきりんさんの『ゆるく考えよう』(イースト・プレス/2013年)を紹介したい。

ちきりんさんをよく知らない人は、極めて合理的であったり、意見をきちんと表明したりするイメージから、(いわゆる意識高い系ではなく)本当に意識の高い、とても頭の良い方だと思っているかもしれない。これはたしかにそうである。

それでは、ちきりんさんが「何に対して意識が高いのか」はご存じだろうか。
それは「毎日を気分よく楽しく過ごし、おいしいものを食べて、できる限り長い時間を自分の好きなことに使って過ごす」ことに対してである。
いわずもがな、こういう生き方をしたいという人が大多数だろう(もちろん私もその一人)。そのように考えた際、何かヒントを得るために手にとる本として、今までの私は一部を変えるような実用本やビジネス本が多かった。
例えば、レシピの本、インテリアの本、タイムマネジメントの本など。
こういう本ももちろん好きだし、参考にもする。
しかし、本気でこういう生き方に近づきたいと考えた時には、根本(価値観、考え方)から変えていかなければ意味がない。

ちきりんさんは、すべての表現物を通して、まさにこの根本に関する具体的な提案をされている。
理想的な生き方の実践に向けて徹底的に考え続け、体系化された思考やその方法を見せてくれる人として最高峰だと私は思っている。
書籍では、その体系化された思考や方法を一冊ごとに別テーマで丁寧に示してくれているため、生きる方法を考える際のバイブルとなっている。
ブログやTwitterにおいても、もちろんこの軸は常に一貫しており、その思考プロセスやそこから導きだした意見などを発信されている。

 

『ゆるく考えよう』は、上記のような生き方を求め、「社会が押しつけるガチガチの固定観念に縛られず、自分らしく、ゆるく生きる」ための方法を紹介している本である。文庫版のまえがきにおいて「自分の考えが当時(単行本執筆時)と全く変わってない」と書いていたが、現在の文章や活動を知る限りでは、今でも一貫した考えを持たれているように感じる。
よってこれを読めば、ちきりんさんの考えの大枠がほぼ掴めるようになっているはずだ。
この本で特に紹介したい点を2つあげたい。

 

1.具体的かつ合理的な方法が掲載されている

「助言の聞き方」「何かを選択する際の基準の決め方」「ローンの組み方」「アドバイスの正しいもらい方」など、実生活に直結したそのまま使えるような方法の数々が紹介されている。

例えば「アドバイスの正しいもらい方」では、
・助言者の多くが「本人が好きなことをするのが一番」と思っているので、本人が望んでそうな方向に答えを持っていく
・相談者についての情報がないと、助言者は「自分のような人間にとって一番よいと思える答え」を教える
・質問をして得られることは、その相手の持つ知見のうち「質問者が思いついた範囲のことだけ」
という「なるほどたしかに」と思える事実を基に、

  1. 必ず両方の選択肢を質問文に入れる
  2. 質問するのではなく自分を理解してもらう
  3. 最後に相手のいいたいことをいってもらう

というアドバイスのもらい方を提唱している。

この一例を見ても、ちきりんさんが根性論や理想論ではなく、地に足の着いた合理的な考えを持たれていることがわかると思う。


2.自分基準で生きるということへの追及

「毎日を気分よく楽しく過ごし、おいしいものを食べて、できる限り長い時間を自分の好きなことに使って過ごす」とは、すなわち「自分基準」で生きるということである「社会が押しつけるガチガチの固定観念に縛られてはいけない」ということを繰り返し示してくれているのがこの本である。

私は、小さい頃から周りの「普通」に違和感を抱くことが多く、変わってると言われることもしょっちゅうで、それがとても嫌だった。
それなりに年齢を重ねるまでは、普通に憧れて(というよりは変わってると思われたくなくて)、大多数に紛れるためにはどうすればいいか=「世の中の大多数はどういう考えを持って生きているのか」を注意深く気にしていた。
気にしてはいたがどうしても違うという感覚は拭えず、なおかつ頑固なので迎合もできず、そうしている間に自分と同じような考えの人もたくさんいることを知り、今では自分の考え方や好きなものに対しては、きちんと自信を持っている。

もしも自分が「普通」に対して違和感を抱くことのない人だったら、頑固ではなかったら。苦痛は少なかったかもしれないが、今のような自分でつくりあげた自信は持てず、考えるということをおろそかにし、人の気持ちも考えようとしなかったかもしれない。

「あなたはあなたのままでいい」という類のメッセージは、対面でも、表現を通してでも、様々な場面で使われる。そのメッセージがささるかどうかは、発信する人、される人によっても違うと思う。
私の場合、ちきりんさんのそのメッセージは、大いにささった。
軸があって考えが一貫していること、感情に訴えるのではなく合理的であること、多数派にも常に疑いの目を向けること、自分で考えたところに自分があること。そういうことの上に、このメッセージは成り立っている。

ニュートラルに、かつ考え続けたうえに成り立つため、流されることを徹底的に厭うという面においては、厳しいものかもしれない。
この本のタイトルは(社会の固定観念という縛りから)ゆるくなろうという意味であり、「自分自身が生きる」ということに対しては、至極真面目な本である。

その先にある理想の生活へ、その向かっている最中も含め、楽しく生きたい人はぜひ。