好きなものは、自分で決めるので

私にとっての良いものを表現してくれる作品を愛でるブログ。

ドラマ:『おっさんずラブ』『きのう何食べた?』~魅力と相違点

おっさんずラブ』(2018年4月~6月/テレビ朝日土曜ナイトドラマ)を観たいと思いながらずっと観れていなかったが、映画公開にあわせ、まずはドラマの方をようやく観ることができた。
第1話を見たらあまりの面白さに止まらなくなってしまい、結局1日で全7話を観てしまった。(仕事がある普通の平日だったのに。やる気があれば、時間ってつくれるものだなと実感)

ご存知の方も多いと思うが、(もちろん他の要素もたくさんある魅力的な作品だが)この話は、男性同士の恋愛ストーリーである。
男性同士の恋愛ストーリーのドラマを観るのは、私にとっては2度目である。
1度目は『きのう何食べた?』(2019年4月~6月/テレビ東京ドラマ24)で、このドラマも、毎週楽しみにしていた大好きなドラマである。
きのう何食べた?』は原作漫画の方を読んでいないので、あくまでドラマのみの感想となってしまうが、この二つのドラマについて書きたくなったので、書いてみる。

 

同性愛の捉え方に対する世の中の変化

こんなに短期間で変わるのかと思うほど、ここ2~3年で同性愛に対する捉え方を急激に見直そうとする動きがあるように思う。
具体的には「異性愛も同性愛も、愛は愛であり、何らかの偏見を持つようなものではない」といったような捉え方へ変化させようという動きである。

90年代の作品などを見返すと、ホモ・オカマなどの言葉とともに人を侮辱する表現が当たり前のようにでてきて驚愕するし、7~8年ぐらい前でも、男性が好きな男性=派手な見た目でテンションが高い肉食のイメージが固定されていたと記憶する。

そのようなイメージを変える動きが急速に生まれた理由には、おそらく様々な要因があると思う。

今現在私が考えている要因の一つは、

  • 働き手を増やすべく、ダイバーシティを認めようという動きが政府主導で起こる

   ↓

  • ダイバーシティという考え方を広めるべく、様々なメディアが積極的にその事象を取り上げる

   ↓

  • その中に同性愛があり、関連するドラマ作品を不特定大多数の人が見れるテレビというメディアで表現できる機会が増える

   ↓

  • (二つのドラマのように)良質な作品が生まれ、それを見る人たちによって、捉え方に変化が生まれる

   ↓

  • 変化の結果、以前のような偏見を持った発言が批判され、淘汰され始めた

 というものである。

 

この捉え方の変化について、 どの程度の規模で起こっているものなのかは正直わからない。
日常会話の中では、同性愛をはじめ、未婚・既婚に関すること、セクハラやパワハラなど、人を傷つけるような発言や行動は咎められ、何となく減ってきたような感覚を持っている。
しかし、これは私の環境が変わったため、そういう場が見えなくなったためとも考えられる。
また私がフォローしている著名人の方々は、もともと偏見のような弱者・強者が生まれる関係性に疑問を持っているような方が多く、そのような考え方を日常的に見聞きしているため、一般的になってきたと思い込んでいるだけかもしれない。

個人的には、なめられたくない精神から、何に対してもなめるような精神は持たずに生きたい(なめられた時の反撃は例外)と常々思ってきたため、今になって掌を返したような、長いものに巻かれているような世の中の変化にモヤモヤしてしまうところも正直ある。
今までに傷ついてきた人、苦しんできた人たちのことを考えると、何だかくやしく思ってしまうからだ。
だけど、今後は偏見から解放される人が増えていくはずと信じたいし、悪気なく何かを言われて傷つくことがある環境よりも、言わないことを選択する人が多い環境を増やす方がいいと思う。

おっさんずラブ』『きのう何食べた?』は、それぞれ別の表現方法で「異性愛も同性愛も、愛は愛であり、何らかの偏見を持つようなものではない」ということを示してくれたとてもすばらしい作品である。

 

おっさんずラブ』の表現 ~ 人を愛する気持ち

 アニメ!アニメ!(2018年6月2日)の記事より、脚本・徳尾浩司さんはインタビューで下記のように答えている。

https://animeanime.jp/article/2018/06/02/37984.html

あくまで純粋に“恋愛”を描きたかったというのがスタート。でも、同性同士の恋愛を描く際に、LGBTの悩みや葛藤の中にコメディを入れることで、意図せず見ている方を傷つけてしまう可能性があるので、それはしたくないと。


なので、人と人が真っ直ぐ恋愛に向き合うことを主眼に置きました。そういう意味では逆に、たとえおっさん同士であっても、“恋に一生懸命”すぎて笑えるものがあってもいいのかなと。

最初のほうは「これをやったらマズイかな?」と悩んだこともありましたが、あるときから「同性同士だから面白い…とかでは全くなく、少女漫画的な表現に“おっさん”が真摯に取り組んでいるところが面白いんだ!」と気づきました。

男性同士の恋愛を表現するコメディといえば、今までは「男性同士である」という関係性を笑いにしたようなもの、もしくはそれを嘲る人に同調させるようなものしか存在しなかったのではないだろうか。
しかしこのドラマはインタビューで仰っているとおり「真摯さ」が面白い。
俳優さんたちの演技力で笑いを生み出している正統派コメディである。
田中圭さんの演じる「はるたん」が母性本能をくすぐるとてつもなく愛おしい存在であることも、二人の男性から愛されるというドラマの状況をすんなり受け止める要素になっていると思う。

また、LGBTの悩みや葛藤を一切書かないという革新さも、このドラマの世界を温かいものにしている。
このドラマ内では男性が男性を好きになる状況も多く、どんな愛も同じ目線で描かれている。全員が愛する対象でもあり、嫉妬する対象にもなる、完全に平等な世界である。

ジェンダーに関係なく「人を真摯に愛する」というとても純粋で綺麗な気持ちを表現してくれているのが、このドラマである。

 

きのう何食べた?』の表現 ~ 同性愛者として生きる日常

このドラマは『おっさんずラブ』とは異なり、かなり現実の世界に沿った世界観をもつ作品である。 
男性二人が同棲している日常を描いた作品であるが、 食費を月25,000円に抑えるべく日々の買い物をして料理をする様子など、同性愛だろうと異性愛だろうと、そういった日常は変わらない。
普通に考えれば当然なことであるが、そういう同性愛の同棲を丁寧に表現してくれていることが、この作品の心地よさに繋がっている。

そんな二人の悩みや喧嘩の種となるのが、嫉妬、家族からの理解、関係性を周囲に知られることへの価値観の違いである。
誰にでも起こり得る問題だけではなく、仮に現在の異性愛だとしたら全く気にならないことが気になったり、反対に見逃してしまいそうなことに大きな喜びを感じたりする二人の心の動きに対し、私は感極まり、毎回泣いていた。
それは同情ではなく、誰も悪くないけれどどうにもならないことへのもどかしさや、人と人の間に生じる温かさに対してである。
ささいなことから深刻なことまで日常で起こるすべてのことを、互いを思いやり合いながら丁寧にかみしめるように暮らす二人の姿に胸を打たれっぱなしだった。

こちらもジェンダーを超えて「思いやりをもちながら、毎日を丁寧に生きる」ということの温かさを表現してくれるドラマだった。

 

 

この二つのドラマのように、今まで特異的なものとして捉えられてきたものを、普遍的なものとしてシフトしてくれるような作品が増えている。
それも表面の問題ではなく、本質そのものをシフトしてくれるようなものである。

私自身、今の自分をつくっているものとして、愛でるべき作品たちの存在がある。
こういう素敵な作品が生まれ続けることで、どんな人にとっても、世の中がどんどん生きやすくなっていけばいいなと本気で思う。
今はその過渡期にいる気がしてならないので、今後もドラマ界の動向を追い続けたい。

 

おっさんずラブ DVD-BOX

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きのう何食べた? DVD BOX(5枚組)

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