好きなものは、自分で決めるので

私にとっての良いものを表現してくれる作品を愛でるブログ。

本:『「かわいい」のちから 実験で探るその心理 』(入戸野 宏)

私は、「自分が気分よく生きるために必要なもの」をしょっちゅう探し求めている。
いわずもがな、そういうもので生活を満たしていきたいからだ。
そのような観点で自分の生活をふりかえった時に、「かわいい」という感情がとても大きな役割を果たしていることに気づいた。
本屋へ行けばかわいいと思う装丁の本に注目するし、美術館へ行くのはかわいいと思うもののテーマ展示をしている時である。
旅行はかわいい雑貨・かわいい街並みをとにかく見たいという目的で行くことが多い。とにかく「かわいいものに接したい」という思いで過ごしている時間が多いようだ。

 

この「かわいい」という感情はいったい何なのかが気になり、読んでみた本が『「かわいい」のちから 実験で探るその心理 (DOJIN選書)』(化学同人/2019年)である。

この本によると、かわいいものに対する反応には、以下のようなものがある。
・「かわいい」は養育や保護というよりも、「接近動機づけ」に関連すると言える。かわいいものは近づきたいという気持ちを引き起こし、長く見つめられる。
・かわいいものは快である と評価されることは先行研究で一貫して認められている。気分を良くするために人々はかわいいものを利用しているのではないかという説もある。

なるほど、私の行動そのままだ。
この説にまさにあてはまる人=私である。
私にとってかわいいものを見続けることは、没頭するためともいえる。
対象を見ている間は、かわいいなぁという快以外の感情が入り込む隙は無くなる。
心が動かされる本や映画などの物語を見ている時、音楽を聴いている時と同様の「没頭する」という効果を、私はおそらくかわいいものに求めているのだ。

 

また、この本では、今まで明確に指摘されてこなかった「かわいさ」(とその知覚)と、見る人の側で生じる「かわいい」感情とを区別して考えている。
そのうえで、下記のような「かわいい感情のモデル」を提示している。


  かわいい感情を引き起こす要素を認知する

   ↓

  評価する

   ↓

  かわいいという感情が沸き起こる
  (感情は、意識・無意識に関わらず、必ず「評価」という過程を含んでいる)

   ↓

  主観・行動・生理反応によって表出される(観察可能となる)

 

このことにより、「かわいいんだけど、かわいくない」「かわいくないけど、かわいい」という矛盾した表現を説明できると書かれており、何だか救われた思いがした。

私は昔から「ピンクをかわいいと思えない女子」だったからだ。この評価という言葉には「きちんと自分で決めた」というニュアンスを勝手に感じられ、とても頼もしい。
私は評価した結果、ピンクじゃない色のほうがかわいいと思えていただけなのだ。
もしも私のような者がピンクを好きだと感じていたら、これは私の意志でかわいいと思えている色なのか、世間的に女子の色として進められているものだからなのか、と反対にもやもやしてしまうところだったから、その点においてもよかったかもしれない。

 

そして「かわいい」には、まだ研究されていないこともたくさんあるそうだ。
例えば、かわいいと感じることと、癒されることとの関係を直接明らかにした研究はない。
できる人がヘマをすることを好ましいと感じるような「ギャップがかわいい」という感情は、見る人の自尊心や能力の程度によることが示されているそうだが、ここもまだ一筋縄ではいかないらしい。

 

私も、「かわいい」には知りたいことがまだまだある。

 

①かわいいの種類について

この本では、便宜的に可愛いカテゴリを「ベビースキーマ(おさない可愛さを感じさせる見た目の特徴)」「ヒト」「モノ」「独自」の4つに設定していた。
その共通要因として、先述の通り「接近動機づけ」に関連することが書かれており、それは同意である。
しかし私にとって、かわいいと思う女性(同性)・男性(異性(恋愛対象))・ペット・モノに対する感情はそこ以外は違うもののように思える。

「かわいい」=接近動機づけに絞ったとすると、かわいい以外の感情が異なるせいかもしれない。
ざっくりいえば、女性「憧れ」、男性「ときめき」、ペット「庇護」、モノ「所有欲」のような感情を各々に持っているが、これらの感情とかわいいと思う感情の結びつきが気になる。

 

 ②美しさについて

顔については、以下のような考えが掲載されている。
・美しい顔とは整った顔のことで、笑っていなくても魅力的な顔は美しい顔
・可愛いという判断には、見る人との社会的な関係性(近づきやすいかどうか)が含まれており、美しい人は笑顔になると可愛くもなる

また「美しさや権力には上下関係(一元的な世界)がある」とのことである。
美しい=整っていると捉えると、一元的というのはその通りかもしれない。

しかし、私は「美しい」に対してとても広い概念を持っている。
【参照】本:『女の子よ銃を取れ』(雨宮まみ)

またモノに関しては、かわいいもの・美しいものを見た時の気分が、自分の中ではまったく同じものになっているような気がしている。
「ほぁー!」とため息が漏れるようなうっとりした気分というか。
その対象をかわいいと思っているのか、美しいと思っているのかさえ区別がつかないこともある。
感性の鈍さといってしまえばそれまでなのだが、自分にとって心地よいモノを見た時のこの感情についても非常に気になっている。

 

この本は「実験心理学」の立場から論じたこともあり、心理学に関するコラムも掲載されている。その中で、好きだなと思った言葉を最後に紹介したい。

ある働きかけ(実験操作)を行ったときに生じる心の変化をデータとして測定し、「こういうときはこうなる」という因果関係を明らかにするのが、心理学実験の目的です。

(中略)

心理学の法則は、個人に当てはまるものではなく、集団の平均値に当てはまるものです。どんな心理学の法則があったとしても、あなたには集団の平均値と同じように行動しない自由(権利)があります。

平均値を知り、それにおさまらない自由。こういった話を心理学研究者から聞けるのは、何とも心強い。すべての知見を自由に生きるために使えたら最高だ。

「かわいい」は、一生付き合っていく感情になるはずなので、これからも考え続きたい。

 

「かわいい」のちから 実験で探るその心理 (DOJIN選書)

「かわいい」のちから 実験で探るその心理 (DOJIN選書)